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春色辰巳園ー春水のヒトに対する優しい眼。

岩波書店/日本古典文学大系64 春色梅児誉美

2013.10.16


岩波書店/日本古典文学大系64 春色梅児誉美

感想文の宿題が貯まってしまった。

暫く、感想文を怠ってしまったので、随分貯まってしまったな。読む方は、毎日必ず何か読んでいるけれど、感想文は、諸事情により時に滞る。
まずは、『春色辰巳園』。
これは、為永春水の『春色梅児誉美』の外伝なのです。
スターウォーズにたくさんの外伝があるように、ファンに向けて書かれたものと見て良い。
なので、『春色梅児誉美』を読んでいない人はこの記事を読まなくて宜しい。また、『春色梅児誉美』を知っていて、かつネタバレを畏れる人は、直接、原典に当たるべし。
この一遍だけで読むに値するかというと、そうでもないと思う。

春水のヒトに対する優しい眼。

本編の『春色梅児誉美』の主人公は米八という芸妓で、零落して金も無い色男・丹次郎に貢ぐ。丹次郎は意外な落とし種であって、米八も報われる。
児誉美
で影をちらほらさせていた、仇吉は、丹次郎にまとわりつく厄介物扱いだった。
『辰巳園』では違いますな。仇吉の生い立ち、気持ちをクローズアップしている。
『春色梅児誉美』で唯一本当の悪人として描かれたのは、丹次郎の許婚お蝶を襲った盗賊だけだった。『春色辰巳園での悪者は、仇吉のお母さんだけです。
春水には、基本的に人間を善と捉え、「どんな人にもそれなりの事情がある」という優しいスタンスがあります。
それは、心中ものや滑稽本を生み出した江戸戯作者の伝統的な態度かもしれません。

春水の『男の夢』。

丹次郎という奴は、何とも優柔不断な色男。そのせいで、仇吉と米八の喧嘩はこじれにこじれる。
彼には16歳の許婚のお蝶、生活の面倒を見てくれている米八がいる。その上で、仇吉とも関係を結んでいる。
富裕になると、お蝶を正妻とし、米八を妾とする。お蝶米八は同じ傘の下で非常に親密になる。なかなか理不尽だ。
さらに仇吉の窮地を米八が救うことで、丹次郎一家に仇吉も加わることになる。これで大団円。
富裕になった丹次郎の子供を宿した仇吉は、米八への義理で行方不明になる。
これが、子供の取り違えで発見されるのエピソードは、ベタベタだけど面白かった。
春水自身、婿入りしたが遊びが祟って離縁されている。小説には自身の夢を託したと思われる。


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