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BOOKS

永井荷風-日和下駄。

失われつつあるものと、失われたものへの愛。

2013.04.18


荷風随筆集(上)岩波文庫31-041-7

荷風の有名な随筆はほとんど読んだと思うのですが、わざわざ岩波の荷風随筆集の新品を買ったのは、実は、四十肩の電気治療の最中の十分程度の時間を潰すため。
お風呂で読んだ本は、外で読めるほど状態は良くないのです。
ほんの十分でも毎日続くとなると惜しい、ということで、この時間は、好色二代男から浮気して、荷風随筆集を読むことにしました。
肩の治療も一段落し、二代男も読んでしまったので、荷風随筆集もお風呂に持ち込んでしまいましたが。

さて、日和下駄は、1915年、荷風が34、5歳の頃に、出版されたもの。
海外から帰朝後間も無く、あめりか物語・ふらんす物語を執筆した荷風は、その後、著しい西洋尊重・日本蔑視の論を繰り広げた。
それは、子供じみているほどで、私にすら、読むに耐えないとさえ思わせるものです。
しかし、元々、歌舞伎や戯作に親しみ、漢文を解し、落語家に弟子入りしたことさえもある荷風にとって、江戸文化は、失われた理想郷でした。
西欧化に付き進む当時の日本において、江戸文化は、既に失われた非現実だからこそ、荷風にとって賞賛し、標榜し得る唯一のものだったと言えます。
「断腸亭日乗」を読んでも分かりますが、荷風は元々、非常に文句の多い人間で、その理想は、非現実に向かわざるを得ない。そういう性向を持っていたと思われます。
1919年の「花火」での、現実社会と離れて戯作者として生きる態度を表明した一節は有名過ぎるので引用はしませんが、社会と対峙せず、己が理想の中にのみ生きようとする荷風の態度は、「日和下駄」ではかなり成熟したものとなっています。

初編「日和下駄」は、荷風の散歩のスタイルや、幼少期への回顧にはじまり、彼の散歩の趣向に触れていきます。以降、「淫祠」、「樹」、「地図」、「寺」…とテーマに沿って、随想を進めていく。
荷風に詩情を抱かせるものの多くは、当時の現実の極めて片隅に位置し、何れ消え去りそうな風俗、風習、風景です。荷風は、それらを愛惜しみつつ、江戸時代の風景を心に描き、ごくたまに、現実を恨み、未来を愁います。

私も散歩が好きで、東京の山手・下町を問わず、年中、歩き回っていますが、そういう目から日和下駄を読むと、その一片に描かれた風景は、荷風の時代の風景、江戸時代の風景、そして現代の風景と、三重になって奏でられます。その面白さの端々を切り取って紹介することも可能だとは思いますが、こうした随筆は文章の一節々々に味わいがありますので、興味を持ったなら、ぜひ読まれる事をお勧めします。


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